新型コロナウイルスは再感染すると重症化する?

新型コロナウイルスは再感染すると重症化する?

新型コロナウイルス感染症は何回も感染することは間違いないようです。外国では初回感染後、わずか数週間、あるいは数カ月後に再感染したことという報告は多くあります。ではどれぐらいの頻度で再感染するのでしょうか?オミクロン株以前のデータでは再感染は極めてまれといわれてきましたが、オミクロン株に置き換わってからは再感染が増えているというデータがあります。南アフリカは人口の半分以上がすでに新型コロナウイルスに感染しており、再感染の研究がやりやすいそうです。それによるとオミクロン株が主流になってから新型コロナウイルスに再感染するリスクは、デルタ株が主流だった期間の約8倍に増えたそうです1)。そして新型コロナウイルスは再感染するのが通常になるものと予想しています。
 では初感染後、どれぐらいの期間を経て再感染がおこりうるのでしょうか?
 2021年のデータ、これはもちろんオミクロン株以前の研究ですが、遺伝子研究を用いた検討で初感染後3か月以上経過すると再感染が起こりうるこが報告されています2)。これは免疫学的に推定されたもので実際に人でのデータではありませんが実感として3か月以内に再感染することはないように思います。
 ところが一方、今年2月にデンマークのグループより発表された未査読の研究データによると、BA.1の再感染が約26日後(中央値)、BA.2の再感染が約36日後(中央値)に認めたとのことです3)。再感染者の多くが若者で、比較的軽症だったそうです。オミクロン株は免疫をすり抜けて伝搬し、免疫を強化しないために従来のデルタ株などよりも間隔をおかずに再感染する可能性があります。
 再感染した場合の症状はどうでしょうか?

文献4)より転載

 カタールからの報告です。カタールでは、2020年3~6月に新型コロナウイルス感染の第1波があり、その後人口の約40%がSARS-CoV-2の抗体を保持していました。その後、2021年1~5月に、B.1.1.7(アルファ株)およびB.1.351(ベータ株)による2つの連続した波が発生しました。ワクチンの有無、その他データに及ぼす影響のある因子をマッチングさせ、再感染による「重症」(急性期入院につながる)、「重篤」(ICU入院につながる)、「致死的」のリスクを調査し、初感染と比較したものです。初感染から再感染までの期間の中央値は277日(179〜315)でした。再感染時の「重篤」のオッズは、初感染時の0.12倍でした。「重篤」は初感染時では28例、再感染時はゼロで、オッズ比が0.00でした。COVID-19により死亡したのは、初感染時は7例、再感染時はゼロで、オッズ比は0.00でした。再感染時の「重症」「重篤」「致死的」の複合アウトカムのオッズは、初感染時の0.10倍でした。再感染時の入院/死亡リスクは初感染時よりも90%低かったそうです4)。以上の結果より、新型コロナの再感染は初感染に比較して明らかに軽症で済むと結論されており、その後、そのまま信じられてきました。
 しかし、COVID-19の感染を繰り返すほど重症化や死亡のリスクが高まり、死亡リスクは2倍以上、入院リスクは3倍以上になるという報告がなされました。これは米国退役軍人省の医療データを用いた解析です。2020年3月1日~2022年4月6日の同省の医療データで、新型コロナウイルス感染陽性の記録のある人は51万9,767人、そのうち90日後に生存していたのは48万9,779人であり、4万947人に再感染の記録がりました。複数回感染した人のうち、3万7,997人(92.8%)は2回、2,572人(6.3%)は3回、378人(0.9%)は4回感染していて、5回以上感染した人はいませんでした。1回目と2回目の感染の間隔は中央値191日(127~330)、2回目と3回目の間隔は同158日(115~228)でした。

文献5)から転載

 2022年6月25日まで追跡して解析した結果、SARS-CoV-2感染が1回だった人に比べて2回以上感染した人は、追跡期間中の全死亡リスクは2.17倍高く(ハザード比(HR)2.17〕、入院リスクは3.32倍高いこと〔HR3.32〕が明らかになりました。また、腎疾患はHR3.55、肺疾患はHR3.54、血液凝固異常はHR3.10、心血管疾患はHR3.02であり、そのほかにも糖尿病、消化器疾患、筋骨格系疾患、神経学的疾患、倦怠感、何らかの後遺症およびメンタルヘルスへの有意な影響が認められました。いずれの疾患も1回目より2回目、2回目より3回目の症状が重くなっていました5)
 一般にウイルス感染症は2度目の再感染は初回の感染より症状が軽くて済むのが常識です。それは体内の免疫が構築され素早く病原体に対応するからです。ごくごく例外的にデング熱は抗体依存性免疫増強という機序で再感染の時に重症化することがあります。これはワクチンや過去の感染によって獲得した抗体が再度ウイルスに感染した時、もしくは過去のウイルスに似たようなウイルスに感染したときに、その抗体が生体にとって悪い作用を及ぼし、感染・炎症が重篤化してしまい、重症化をひきおこす現象のことです6)。実際新型コロナウイルス感染症でこのようなことが起きるのか?もしくは度重なる感染で臓器損傷が足し算的に増えてこのような結果になったのかは不明です。
 この研究の対象者が退役軍人という特殊な集団であるため、このデータがすべての人にあてはまるのかどうかはともかくとして、やはり新型コロナウイルスは1度感染して軽症ですんだとしても、再感染しないように引き続き感染対策を継続する必要があると感じました。

令和5年1月10日
菊池中央病院 中川 義久

参考文献

1)Pullam JR et al : Increased risk of SARS-CoV-2 reinfection associated with emergence of Omicron in South Africa . SCIENCE 15 Mar 2022Vol 376, Issue 6593DOI: 10.1126/science.abn4947
https://www.science.org/doi/10.1126/science.abn4947

2)Townsend JP et al : The durability of immunity against reinfection by SARS-CoV-2: a comparative evolutionary study
https://www.thelancet.com/journals/lanmic/article/PIIS2666-5247(21)00219-6/fulltext
3)Marc Stegger et al : Occurrence and significance of Omicron BA.1 infection followed by2 BA.2 reinfection
https://doi.org/10.1101/2022.02.19.22271112

4)Abu-Raddad LJ et al : Severity of SARS-CoV-2 Reinfections as Compared with Primary Infections . The New England journal of medicine. 2021 12 23;385(26);2487-2489. doi:
https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMc2108120?url_ver=Z39.88-

5)Acute and postacute sequelae associated with SARS-CoV-2 reinfection
https://www.nature.com/articles/s41591-022-02051-3

6)抗体依存性免疫増強とは