2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方

2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方

日本感染症学会から2021-2022 年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方1)が発表されたのでここで要約します。
 幸いなことに、2020-2021 年シーズンは、インフルエンザウイルスの検出報告はほとんどなく 、心配されていたインフルエンザとCOVID-19の同時流行はみられませんでした。これは、COVID-19 対策として普及した手指衛⽣やマスク着用、三密回避、国際的な⼈の移動の制限等の感染対策がインフルエンザの感染予防についても効果的であったと考えられます。またインフルエンザウイルスと SARS-CoV-2 との間にウイルス干渉が起こった可能性もあります。では、2021-2022 年シーズンについてはどうでしょうか。北半球の冬季のインフルエンザ流行の予測をするうえで、南半球の状況は参考になります。オーストラリアからの報告によると、2021 年流行シーズンにおいて、インフルエンザ確定患者数は昨年同様きわめて少数です 。このことより、2021 年冬季は北半球での流行を認めないのではないかとも考えられますが、アジアの亜熱帯地域においては様相が異なります。WHO からの報告によると、インドやバングラデシュでA香港型の流行が認められています。これらの国々では、インフルエンザワクチン接種が普及しておらず、社会全体のインフルエンザに対する免疫が低かったと思われます。ただし小流行を繰り返すことで、これらの地域でウイルスが保存され、今後国境を越えた⼈の移動が再開されれば、世界中へウイルスが拡散される懸念があります。前シーズン、インフルエンザに罹患した⼈は極めて少数であったため、社会全体の集団免疫が形成されていないと考えられます。そのような状況下で、海外からウイルスが持ち込まれれば大きな流行を起こす可能性もあります。以上の点を鑑みて、日本感染症学会では、2021-2022 年シーズンにおいても、インフルエンザワクチンの積極的な接種を推奨しています。
 インフルエンザシーズンの時期と現行の不活化ワクチン効果の減弱を考慮すると、ワクチン接種は理想的には 10 ⽉末までに行うことが推奨されます。しかしながら、現在我が国の多くの医療機関は、COVID-19 の診療とワクチン接種に忙殺されています。米国 CDC は、効率的にワクチンを接種し接種率を高めるために、インフルエンザワクチンと COVID-19 ワクチンの同時接種も可としており、米国では両者の混合ワクチンの開発も始まっています。一方、わが国では、現時点で、COVID-19 ワクチンとその他のワクチンとは、互いに片方のワクチを受けてから 2 週間後に接種することになります。COVID-19 ワクチンをまだ接種していない⼈には、まずそちらを優先せざるを得ないかと思われますが、並行してインフルエンザワクチンの接種もご検討いただきたいと考えます。両方のワクチン接種のためには、医療機関を複数回受診する必要がありますが、その負担のためにワクチン接種頻度が低下するような事態は避けていただきたいと存じます。COVID-19 の影響により、インフルエンザ流行の時期がずれる可能性もありますが、ワクチンが使用可となる時期が到来すれば、速やかに接種を行うことが望ましいです。ワクチンの供給に関して、厚⽣労働省の発表によりますと、2021-2022 年度ワクチンの供給量は、製造効率の高かった昨年度に比すると 2 割程度減少する予定です。ワクチンを効率的に使用するためにも、昨年同様、13 歳以上は原則 1 回接種となります。
 当院ではまだCOVID-19のワクチン接種に忙殺されておりインフルエンザワクチン接種は11月1日より開始いたします。

令和3年10月6日
菊池中央病院
中川 義久

参考文献
1)2021-2022年シーズンにおけるインフルエンザワクチン接種に関する考え方https://www.kansensho.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=44