高齢者用の高力価インフルエンザワクチンーエフルエルダー
インフルエンザの発症や合併症予防のため、従来、4価インフルエンザHAワクチン皮下注製剤の定期接種が実施されています。4価インフルエンザHAワクチンには、4種のインフルエンザウイルス(A型株[H1N1亜型およびH3N2亜型]とB型株[ビクトリア系統および山形系統])のHA抗原それぞれ15μgを含有しています。さらに、2024年10月からは3種のインフルエンザウイルス(A型株[H1N1亜型およびH3N2亜型]とB型株[ビクトリア系統])を含有する、3価経鼻弱毒生インフルエンザワクチン(商品名フルミスト)が2歳以上19歳未満の者に接種可能となりました1)。しかし、高齢者(65歳以上)は若年成人と比較して、加齢やフレイル、合併症の増加により、インフルエンザワクチンに対する免疫応答が低下していることから、そのワクチン効果が低下することが以前より指摘されており、より優れた予防選択肢が求められていました。
本年秋ごろより海外ではすでに使用されていた高力価インフルエンザワクチン、エフルエルダが本邦でも使用できるようになりました。エフルエルダは既存の標準用量インフルエンザワクチン(1株当たり15μgのHA)に比べ4倍のHA抗原量(1株当たり60μgのHA)を含有しています。また、従来のワクチンと異なり、筋肉内接種を行うことも特徴です。そもそもワクチンは筋肉内注射がワクチン効果も高く、海外では常識になっています。


Sanofi ホームページより転載
エフルエルダの有効性は、標準用量のインフルエンザワクチンと比較して、インフルエンザおよび肺炎による入院率が64.4%(95% CI: 24.4-84.6)低下することが分かっています2)。さらに、12シーズンにわたる4500万人を対象とした高用量ワクチンのメタ分析では、標準用量と比較してインフルエンザに関連する重篤な合併症を軽減し、インフルエンザ以外の疾患も予防したことが報告されています2)。
副作用は標準ワクチンと共通するものですが、接種部位の疼痛が43.8%と高率に認められています。その他倦怠感、頭痛、筋肉痛などが10%以上とやや高率です。

文献3)より転載
エフルエルダの接種の値段は現在のところ決まっていませんし、自治体からの補助もまだ不明ですが標準ワクチンより高価なものになるでしょう。

Sanofi ホームページより転載
エフルエルダは海外で既に広く使われており、高齢者において、標準用量ワクチンより推奨されている国が多くあります。
我々医師の立場からどのような人にエフルエルダを勧めるかというと、60歳以上で、高齢者施設の入所者・通所者、呼吸器疾患・糖尿病などの基礎疾患がある方、免疫機能低下が疑われる方、インフルエンザワクチン接種歴が少ない方、などに接種を勧めることになると思います。今秋には使用可能の予定です。秋になったら医療機関に相談してください。
令和7年4月18日
菊池中央病院 中川 義久
参考文献
2)高用量インフルエンザHAワクチン「エフルエルダ®筋注」 60歳以上の成人におけるインフルエンザの新たな予防選択肢として 国内製造販売承認を取得
3)エフルエルダ筋注と従来型HAワクチンの違いまとめ~使い分け・接種設計・副反応まで網羅
https://yasasii-kusuri.com/influenza-vaccine-efluelda-vs-standard