インフルエンザ検査はあくまで診断の補助です

インフルエンザ検査はあくまで診断の補助です

 インフルエンザが全国的に流行しています。

国立感染症研究所 2024年12月24日より引用

 国立感染症研究所のホームページには全国的にインフルエンザの警報や注意報が出されています。
 インフルエンザの診断にはほとんど迅速抗原検査( rapid antigen detecting test : RADT )が用いられています。一部では写真を用いた画像診断もされています1)がまだ少数でしょう。
 検査には感度と特異度があり、迅速抗原検査ももちろん万能ではありません。インフルエンザ抗原検査の特異度は優れており98 % と言われています2)。つまり検査で陽性なら診断確定です。感度は発症から検査までの時間により異なり、12時間未満が38.9 %、12~24時間40.5 %、24~48時間 65.2 % 、48時間以降 69.6%と意外に低いことが報告されています2)。この研究での全体の感度は54.3 % でした。著者らは本研究のインフルエンザウイルス陽性者では、予防接種歴のある医療従事者が6割を占めており、37.8℃以上の発熱を3割以上に認めなかったため、ウイルス排出量が少なく、全体として迅速抗原検査の感度が低下したかもしれないと考察しています。また、メタアナリシス3)でもインフルエンザ迅速抗原検査の感度/特異度は、A型:54.4%/99.4%,B型:53.2%/99.8% と報告されておりあまり感度は高くないと分析されています。一方、同検査の感度/特異度を97.1%/89.2% と高く報告しているのもあり、その差は不明です4)。ただ言えることは、症状の強さ、ワクチン接種の有無、使用するキット、検体採取のやりかたなどで偽陰性になる可能性があることは留意すべきです。ちなみに小児での検討では発症6時間未満でも感度92%という報告もあり、小児ではウイルス排出量が多いことがうかがわれます5)。また実臨床では検査後のキットを30分以上放置するとうっすら陽性ラインが浮かび上がったりすることもあるので4)、臨床的に疑わしい場合は30分後にもう一度判定するのも良いかもしれません。
 インフルエンザ迅速診断は絶対的なものではないので、検査を行う前に十分吟味してその必要性を患者さんと考えるべきでしょうが、実際はほとんどの患者さんが検査を希望されるので多くの検査をすることになります。そして検査が陰性だったときに医者の実力が問われるところです。偽陰性なのか?他の感染症なのか(マイコプラズマ、百日咳、溶連菌感染などは治療薬があります)?慎重に診断する必要があります。

2025年1月6日
菊池中央病院 中川 義久

参考文献

1)インフルエンザのAI診断のnodocaの実力は?
2)明石 祐作ら:発症から検査までの時間がインフルエンザ迅速抗原検査に与える影響:前向き観察研究 . 感染症誌 2021 ; 95 ; 9 – 16 .
3)Chartrand C et al:Accuracy of rapid influenza diagnostictests : a meta-analysis. Ann Intern Med. 2012;156:500 – 511 .
https://www.acpjournals.org/doi/full/10.7326/0003-4819-156-7-20120403000403?rfr_dat=cr_pub++0pubmed&url_ver=Z39.882003&rfr_id=ori%3Arid%3Acrossref.org
4)伊藤 健太:小児感染症の迅速抗原検査―こんなピットフォールありますー . 日本医事新報 2023 ; 5179 ; 18 – 32 .
5)高橋 和郎ら:インフルエンザ患者における迅速診断での陽性率の経時的検討 . Sysmex Journal Web 2006 ; 7 ; 1 – 4 .