寒さが本格化するとともに、新型インフルエンザ感染が下火になってきたようです。新型インフルエンザは従来のA型インフルンザより高い気温を好むようで、このまま減少していくのを期待しております。
新型インフルエンザにかわって増えてきたのが、ノロウイルス感染症です。このウイルスは秋から冬にかけておきる感染性胃腸炎の原因の大半をしめるといわれています。年間を通じて市中の散発性下痢症の30%、全食中毒の33%の原因がノロウイルス感染症と考えられています1)。
症状は12〜48時間の潜伏期ののちに突然の嘔吐から始まり、その後、悪寒・発熱、下痢をおこし、通常、2〜3日で軽快します。診断は迅速診断キットがありますが、保険適応ではなく、通常は臨床診断のみです。特別な治療法はなく、止痢剤使用の可否については諸説あります。
ノロウイルスのやっかいなところは、通常の手洗い不足や、過熱不足による経口感染によるものばかりではなく一種の空気感染がおきることです。このウイルスは小型で乾燥に強く、酸、塩素、熱に対してもある程度耐性があるため、患者の便や吐物が乾燥した後に空気中に浮遊しこれを吸入することにより胃腸炎をおこしうるのです。10〜100個という少量のウイルス吸入で感染が成立するといわれています。このような集団発生の報告は多数なされています。乾燥状態でも、1週間、場合によっては2〜3ヶ月も感染力が保持されると推測されています。さらに問題なのは、ノロウイルスは症状消退後も便から1〜3週間ウイルスの排出がみられ、また、不顕性感染もみられることから、個人レベルでの完全な感染予防はかなり難しいものと考えています1)2)。
このウイルスのおもしろいところは、生まれつき感染しにくいひとが存在するということです。そのかかりにくいひとは、血液型がB型のひとと、非分泌型(唾液などの体液では血液型がわからない人)のひとであります。その原因は、ノロウイルスは小腸に感染しますが、感染するときに小腸上皮の血液型抗原のAとOのレセプターが必要なことがわかってきました。つまり、血液型B型と非分泌型のひとには小腸にノロウイルスが付着するレセプターがないので感染しない〜しにくいのだそうです3)。ちなみに、日本人の16%が血液型の非分泌型だそうです。
平成21年12月24日
文献
1)小林宣道ら : ウイルス性感染性胃腸炎. 日内会誌 96 : 94 ?
101, 2007 .
2)山口恵三ら : カシリウイルス感染症, 先端医学社, 東京, 2008.
3)中込治 : ノロウイルス感染症と血液型, アボット感染症アワー,
2006.